
ようこそ“もめん”です。
いまだ終息がみえないウイルス感染。
第2波の感染拡大が懸念されています。
猛威を振るったウイルスが原因で、2020年は多くのひとの命が奪われました。
悲しいことですが、医療関係者でも命を落とされた方がいます。
ウイルスの脅威に愕然とせずにはいられません。
医療の現場は、日常生活でのリスクとは全く違うレベルで、大量のウイルスの危険にさらされているのです。
ウイルスの危険だけでなく、薬品や器具による事故も医療現場にはひそんでいます。
ご自身のいのちを守ることをいとわないでください。
医療現場には危険がいっぱいだということを、いつも忘れないでほしいという願いを込めて描きました。
今回は、医療関係者の方、看護師さん、看護学生さんへ向けたメッセージです。
新型ウイルス早期警鐘の医師、死亡の報
武漢中心病院の眼科医 李文亮(り ぶんりょう)医師(享年34)は、女性患者から新型ウイルスに感染し治療をうけていましたが、2020年2月7日に死亡しましたというニュースが世界中をかけめぐりました。
新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)の可能性に、いち早く警鐘を鳴らしていた医師であったことも衝撃でした。
志が高い若い医師が、国民や家族を想いながらいのちを絶たれることに胸がしめつけられる思いです。
同時に、医療現場におけるウイルスの脅威がひしひしと伝わりました。
このニュース報道のあと、眼からのウイルス感染について話題になりましたね。
ウイルスは、結膜を通して感染することもあるとして、治療にあたる際はじゅうぶんに予防策をとるよう呼びかけているという報道もありました。
新型ウイルスが眼から感染するかどうかは、科学的に証明されてはいないので、いまの段階でははっきりとはわかっていません。
ただ、ウイルスの中には、眼や粘膜から感染するものがあります。
実際に、医療現場では、眼や粘膜からのウイルス感染はあるのです。
眼からのウイルス感染

看護師になりたての頃ですからもうかれこれ20年も前のことですが、内視鏡検査をおこなう医師から眼からの感染について、ショッキングなお話を伺いました。
先生(医師)が、新人医師だったころ、尊敬する先輩医師が、急性の劇症肝炎で亡くなられたというのです。
しかも、劇症肝炎をおこした原因が、眼からの肝炎ウイルス感染だったというのですから驚きました。
そのお話は、胃カメラ検査をおこなっているときに先生(医師)がしてくださったのです。
それはそれは衝撃的でして、忘れられないお話になりました。
ところは内視鏡検査室。
私は胃カメラ検査の介助についていました。
介助者は、患者さんに気を配りながら検査の補助もおこないます。
胃の粘膜を採取する時は鉗子(かんし)という器具を使います。
鉗子(かんし)にもいろいろあって、粘膜組織を採取する生検鉗子(せいけんかんし)。
ポリープを採るときは、スネア鉗子。
大きな組織を粉々にしないで、組織を採取するバスケット鉗子など。
鉗子(かんし)は介助者(看護師)がもって操作します。
生検鉗子の先端は、ハサミのように開いたり閉じたりする仕組みになっています。
「生検するよ」ってドクターにいわれたら、生検鉗子の先端を閉じて、鉗子の先端を医師に手渡します。
医師は、ファイバーの途中にある鉗子口から鉗子を胃まで挿入します。
「開いて」という先生の合図があったら、手元操作で鉗子の先端をひらきます。
「閉じて」の言葉で、鉗子の先端を閉じて粘膜をつまみ取ります。
そして、粘膜組織を把持したまま鉗子を鉗子口から抜きます。
はやく抜こうとする私に、血液などの飛び散りを防ぐように、ゆっくりそっと抜くよう先生(医師)は指示しました。
そしてその場で、劇症肝炎で亡くなられた医師の話をしてくださったのです。
亡くなられた医師の場合、検査中になんらかの要因によって、眼からウイルスがからだの中に入り込んでしまったのですね。
先生のお話からウイルスの怖さを教えていただき、医療現場は、大量のウイルスの危険にさらされていることを身につまされました。
今では、鉗子(かんし)には、血液などの飛散を防止する工夫がされているようですが、血液や体液からの感染には気をつけなくてはならないのです。
実際、内視鏡ファイバーや鉗子などを洗浄する時は、水しぶきと一緒に体液などが目に入らないように、ゴーグルなどをつけて眼を保護することが推奨されています。
一般の病院でも、血液で汚れたトレイや器具を洗うときや、腹水などの体液を流すときなどはフェイスシールドなどで眼を保護することになっています。
医療現場は危険がいっぱい
医療現場はウイルスの危険ばかりではありません。
針刺し事故や、薬品の危険や器具や機械操作による事故など。
医療現場には危険がいっぱいなのです。
看護師になりたての頃は、国家試験に合格し、看護師になったうれしい気持ちばかりが先行しがちです。
以前の私がそうだったように…
新人のときほど、危険性を意識しながら働く必要があると思っています。
でも、新人の時って、なんとなくわかっているくらいの程度なのですよね。
ほんとうの恐ろしさには気づいていないのです。
患者さんのいのちを守ることは、たくさん勉強しますが、自分自身のいのちを守るすべについての講義はあまり聞きません。
看護学校でも医療現場の危険性について、授業でとりあげる機会を増やしてほしいものです。
そして、医療現場では、医師や先輩看護師がもっと危険について声を大にするべきだと考えます。
先輩の経験や生の声は、どんな教科書よりも貴重なものです。
あの時に教えていただいた「危険から自分の身をまもることも大切だよ」というお話は、何年たっても忘れることはありませんでした。
もちろん患者さんのいのちを守ることが最優先ですが、それと同じくらいに自分自身のいのちを守ることも最優先なのです。
自分自身が健康でなければよい看護はできないといわれるゆえんです。
自分の身をまもることが患者さんのいのちを守ることになるからです。
自分のいのちを守ることができなければ、どんなに志の高い医療や看護も実現できないでしょう。
医療現場は危険がいっぱい|まとめ
今回は、ウイルスを含め医療の現場には危険がいっぱいあり、医療にかかわる人は、危険をじゅうぶんに認識して治療にあたっていただきたいという願いをこめました。
今の時点で、新型ウイルスが眼から感染するかどうかということの科学的根拠はまだわかっていません。
しかし、わからないからこそ医療現場では危険を回避する策を十分にしてほしいと願います。
医療現場は、日常生活でのリスクとは全く違うレベルで、大量のウイルスの危険にさらされているからです。
危険をかえりみず、危険などものともせずに勇敢に治療にあたる医療者の方々に感謝しかありません。
どうぞご自身のいのちを守ってください。
今日も最後まで読んでいただきましてありがとうございました。