
人は年をかさねれば老い、いつかは死を迎えることになるのは当たり前なことです。
当たり前に考えられてきた老いについてですが、研究がすすみ、徐々に老化のメカニズムがわかってきました。
様々な要因が重なって老化が進みます。
老化の原因は何なのか。
おもな原因についてわかりやすく解説します。
老化の原因
老化の原因
- 環境
- 細胞の寿命
- ホルモンバランスが崩れる
- 体がさびる
- 免疫力が低下する
- 遺伝子の変異
- その他
アンチエイジング医学を勉強したものとして、お伝えしたい老化の原因。
今回の記事は、「メジカルビュー社 アンチエイジング医学の基礎と臨床 改訂2版」を参考にさせていただき、まとめてみました。
老化については研究途上なので、様々な説がありますが、老化には、おもに7つの原因があると考えられます。
環境、細胞の寿命、ホルモンバランスが崩れる、体がさびる、免疫力が低下する、遺伝子の変異、その他の7つです。
では一つずつ説明していきます。
環境

環境が一番大きな要因だと考えています。
国によって平均寿命に大きな差があることは何よりの証拠です。
日本の平均寿命は84.2歳で、ランキング上位国では80歳をこえています。
しかし、中央アフリカ共和国は53.0歳、アフリカ南部に位置するレソト王国では52.9歳で、ランキング上位国とは30歳もの差があるのです。
衛生環境や栄養、医療の浸透、文化などが大きく影響しているのですね。
日本人の寿命は、年々延びつづけ2018年では男性81.25歳、女性87.32歳で世界でトップクラスに位置しています。
人生50年と言われていた戦後からは、30歳も寿命が延びています。
バランスの取れた食生活の成果でしょうか。
公衆衛生のたまものでしょうか。
医療の進歩も大きな要因でしょう。
日本の環境が大きく変化したことで、老化の速度がゆっくりとなり、長く生きられるようになったのです。
このように、人はおかれた環境で、老化の速度がちがうのです。
細胞の寿命

細胞に寿命があるという考え方です。
細胞にはあらかじめきめられた寿命がプログラムされていて、きめられた寿命に達すると細胞が死ぬことがプログラムされているという説。
細胞の染色体の両末端にテロメアという染色体を保護する部分があります。
細胞分裂を繰り返すたびに、少しずつテロメアが短くなります。
テロメアが短くなってそれ以上分裂できない状態を細胞老化とよんでいます。
テロメアを長く保つことが、寿命を制御する重要な因子なのですね。
近年の研究から、テロメアは「テロメラーゼ」という酵素の働きによって、短くなるのがおさえられ、細胞分裂をくり返すことができるとわかっています。
このことは、老化を防ぐことにつながるとして研究がすすめられています。
ホルモンバランスが崩れる
年を重ねるにしたがって、若さを保つために重要なホルモンの分泌が大きく変化します。
そして、私たちの体を若者型から老人型に変化させているのです。
49歳のときにアンチエイジングドックを受けて、ホルモンレベルを調べました。
が、おどろきモモノキ、惨たんたる結果。
こんなにもホルモンが減ってしまうものかと唖然といたしました。
女性ホルモンなんか感度以下で、測れないくらいに少ないというのです。
しかも、男性の院長先生のほうが女性ホルモンの値が高値だっていうのですから…
出産育児という役目が終わった女性には、女性ホルモンは不必要とでも言わんばかりなんですよね。
この経験は、こちらの記事で詳しくお話しすることにしますね。
若いつもりでも、体の中では着実に老化が進んでいるのです。
細胞をつくるホルモンが減ってしまうのですね。
加齢に伴って低下する代表的なホルモンをまとめました。
- メラトニン
- GH(成長ホルモン)、IGF-1(ソマトメジンC)
- DHEA
- エストロゲンやプロゲステロン(女性ホルモン)
- テストステロン(男性ホルモン)
- 甲状腺ホルモン
- インスリン
体がさびる
りんごを切って放置しておくと、切り口が茶色に変色します。
釘もほっておくとさびてボロボロになりますね。
これは、酸素によって「酸化」されたからです。
このように酸素にはものを「酸化」させる力(酸化力)があります。
人も酸化するとさびるのじゃ。
人は呼吸をして酸素をからだの中にとりこんでいますね。
とりいれた酸素を使って、食事から摂取した栄養素を酸化燃焼させて、発生したエネルギーを生きるために使っています。
このエネルギーを作り出すときに、化学反応によって活性酸素が発生します。
活性酸素には、強い酸化作用があって、細胞膜や細胞のDNAを攻撃します。
活性酸素の攻撃を「酸化ストレス」といい、酸化ストレスによって細胞が傷つくことが「酸化」です。
活性酸素のほとんどは、水として体の外に排泄されますが、2%程度が体内に残ります。
もともと人の体には、活性酸素に対抗する防衛システムが備わっていますが、大量の活性酸素が発生したり、処理しきれないと攻撃をうけた細胞が酸化するのです。
細胞膜が酸化されると、栄養をとりこみ老廃物を細胞の外に出せなくなってしまいます。
このように酸化した細胞が増えることで、老化がすすんだり、病気が発生するのですね。
酸化によって組織が障害されたり、組織に炎症が起きると考えられています。
とくに臓器の老化には、酸化ストレスが重要なメカニズムと考えられていますよ。
活性酸素は、呼吸以外にも発生します。

免疫機能が低下する
私たちは普段なにげなく生活していますが、つねに外からの刺激や異物の侵入などから身をまもる防御システムがあります。
免疫は、細菌やウイルスから体を守り、病気にかからないようにするための防御システムです。
しかし、私たちの免疫機能は、思春期を過ぎるころより徐々に低下します。
あ~悲しい現実がここにも。
厳しい現実にも負けずにがんばってくれている免疫細胞くんを紹介しましょう。
からだの中ではたくさんの種類の免疫細胞がはたらいていますよ。
免疫細胞が生まれるところは、骨髄のなかの造血幹細胞。
骨髄からながれてきたT細胞は、胸腺で進化します。
免疫細胞がはたらく場所は、体じゅうをめぐる血液とリンパ液。
免疫細胞が一番多くいる場所は、小腸のなか。
口から大腸までの消化器官は、皮膚と同じようにいつも敵にさらされています。
なので、多くの免疫細胞がいつでも戦えるようにスタンバイしているのです。
免疫細胞は、体じゅうで敵をつねにさがしながら、敵と戦っているのですね。
大切な免疫システムですが、骨髄の造血機能の低下や、胸腺の萎縮などが原因で、たたかう力が低下するのです。
免疫機能の低下が、病気をひきおこし老化につながります。
遺伝子の変異
有名な早老症であるウェルナー症候群や、生まれたときから4倍の速度で老化がすすむハッチンソン・ギルフォード症候群。
どちらも遺伝子に変異が起きていることが解明されています。
このことから、老化の原因遺伝子が解き明かされ、老化のプロセスを制御している遺伝子が明らかにされつつあります。
また、長寿に関連する遺伝子があることもわかってきています。
老化は、複数の遺伝子変化が複雑にからみあってすすんでいくと予想されています。
その他の原因
その他の原因として、摂取カロリー、メタボリックシンドローム、こころの健康などがあげられます。
摂取カロリーを70%程度へらすと寿命が長くなることがわかっています。
また、メタボリックシンドロームは死亡率の上位を占める血管障害のリスクです。
「人は血管から老いる」といわれるように、血管の状態も老化の原因と考えられます。
もちろん、体だけでなく心も重要な因子です。
まとめ
以上、7つの老化の原因についてお話しました。
老化の原因
- 環境
- 細胞の寿命
- ホルモンバランスが崩れる
- 体がさびる
- 免疫力が低下する
- 遺伝子の変異
- その他
これからさらに研究がすすみ、次々と新しい事実が判明することでしょう。
老化の原因について現時点での情報をまとめました。
私もいつのまにか高齢者と呼ばれる年齢になってしまいました。
老化を意識せずにはいられない年齢です。
老化に抗いながら、楽しく明るく、寿命を全うしたいという気持ちがだんだん大きくなります。
欲ばりでしょうか。
死は、寿命に抗うことができない自然の摂理。
と悟るべきでしょうか。
いいえ、老化のメカニズムの解明には夢があります。
今回参考にさせていただいた「アンチエイジング医学の基礎と臨床」には、研究文献がぎっしりつめこまれています。
人間の英知と、たゆまぬ研究への努力がひしひしと伝わりました。
将来が実にたのしみになるのです。
それは、老化について研究することで、病気の解明や薬の開発にもつながるからです。
病気で苦しむ人がいなくなる世の中がきてほしいと願わずにはいられません。
ただし、これらの研究の多くは、たくさんの研究生物のいのちの上に成り立っていることを忘れてはいけないのです。
私たちは生きていくために、動物や植物のいのちをいただいていることに、いつも感謝の気持ちを持ち続けたいものです。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。